21. Cry for the moon







 まるで、天と地と、上下が入れ替わってしまった様な錯覚を覚えた。


 とっぷりと更けた夜空には、星一つ見えない。
 紺碧の中に、一つだけ浮いた黄色い半月。
 ふわり、流れた生暖かい空気が、海に波を作った。


 見上げたマストの上、月より少し薄い金色が揺れる。


 見張り台の木枠に腰掛けて、流線を描く紫煙を気にも留めずに。


 其の先には紺碧の夜空がある。
 其れを見上げる足のずっと下には、其れとまるで同じ色の海原が広がる。




 其の表情は良く見えない。


 見ようとも思わない。


「おい、」


 堪らず、声をあげる。




 夜空を海原、
 紫煙を波紋、


 見立てれば、其れはまるで深海に続いて居る。




「何だ、腹でも減ったのか、」


 此方を見下ろし、笑いかける其の姿に息が漏れる。


 其の感情の正体を、
 多分誰より彼が知らない。





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