銀のしずく降る降るまはりに 金のしずく降る降るまはりに
鈍い痛みと、一瞬飛んだ意識。
白に包まれ、
其れでも感じたのは安堵感だった。
雪がしんしんと降る音が聞こえる。
一変した風景に、一瞬混乱した。
しかし、其処を包む消毒液の匂いに、すぐに状況を理解した。
助かったのか、
思ったけれど、余り驚きはしなかった。
其れは、多分信用とは少し違う。
すぐ側に感じた気配に、開けかけた瞼を再び閉ざした。
僅かな血の臭い。
誰であるかは直ぐに分かった。
ルフィ。
良かった、
漸く、そう思えた。
暫くの沈黙が有って、ルフィの指が額に触れて来た。
指先に、包帯か何か巻いて居る。
其れが左目を覆う前髪を撫で、
平生と違う感触に、髪が血で固まって居る事を知る。
こんな時にあの剣士のふてくされた顔を思い出した。
多分、ルフィは気付いて居る。
既に自分が起きている事、
余計な事ばかり考えている事。
もう一度、ルフィの指が髪を攫った。
「サンジ、」
余り聞かない低い声でルフィが呟く。
別に理由が有って寝たふりをしていた訳じゃない。
開けた視界の殆どをルフィが覆っていた事に少し、驚いた。
「ナミさんは、」
自分で言って、気付く。
彼女は、無事だろうか。
「寝た。」
「そうか、」
きちんと治れば良い。
あの様子では、何か後遺症が残っても可笑しくは無いとさえ思えたから。
又、ルフィが髪を撫でた。
「どうなってる、」
「……血がこびり付いててあんま良くねえ。」
「洗えねえかな、」
此のままにしておきたく無い。
「頭も怪我してっから駄目だって。拭くだけなら良いっつってた。」
「誰が、」
「何か凄え婆ア。」
「……ふーん、」
少し心許ないな、と溜め息を一つ。
出来れば、余り目立つ様に見せたく無いのに。
「あいつらが、嫌な顔するから嫌なんだ。」
呟きながら、ルフィの指がぴくりと動く。
「……うん。」
「ナミが、気にするから嫌なんだ。」
「ルフィ、」
苦々しそうな、ルフィの言葉を遮る。
「悪かった。」
其れまで無表情だったルフィの顔が、悔恨に歪む。
「分かってんなら、二度とすんな、」
此処に煙草が有れば良かった。
そうしたら、もう少し上手く言えただろうに。
「其れは、無理だ。分かってるだろ、」
「……」
戦う理由がそもそも違うのだ、
「俺が守る事を止めるって言うのは、ルフィ、お前があの麦藁を捨てるのと同じなんだよ。」
「だったら、」
吐き出す様にルフィが言う。
「……俺はどうすりゃ良いんだ、」
多分、俺が望むのは単なる俺の若儘だ。
「其処に、居ろ。其れだけで良い。」
ぱち、
遠くで薪の爆ぜる音がする。
ごめん、
声には出さず、呟いた。
ルサンに非ず。
タイトルはアイヌ民謡の一つである神謡(カムイユカラ)の
リフレイン部分(サケヘ)から取りました。
熊から農耕を伝えられる話だったかと。
雰囲気だけで特にストーリーとは関わりません。
いつもの事。