ひらひら





 久しぶりの寄港で、天気は上々。
 皆其れぞれで用もあって、
 船に残ったのは、図らずも二人。



 段々きつくなってきた陽射しに、右手をかざす。
 其のまま、何となく、掌を眺めていた。


「こら死に損ない、」


 いつの間に目を覚ましたのか、
 横で丸くなっていたサンジが此方を見ていた。


「……何だ、」


 口が悪いのはいつもの事だ。
 こんな時にまで、わざわざ喧嘩にする事も有るまい。


「其れ、やんな。」


 いきなり、一体何を言い出すのか、
 訝し気な此方の表情に、サンジが溜め息を吐く。


「死人鏡、って言うんだよ、其れ。」


「死人鏡、」


 此もいつもの事だが、此の料理人は余計な事ばかり詳しい様な気がする。


「死期が近い人間がやるんだよ。今のお前みたいに。」


 掌を見ていた事を言っているのだろうか。
 だが、未だ良く分からない。


「自分の手を、鏡みたいに見るんだと。」


「ふーん。」


「お前がやると洒落にならないから止めろ。」


「何で手なんだ、」


 サンジが、きょとん、と目を見開く。
 仰向けになって、考え込む様に腕を組んだ。


 じっ、と。
 先刻と同じ様に掌を見る。
 答えは得られそうにない。


「一寸、貸せ。」


 組んでいたサンジの片腕を取る。


 自分の物と見比べる。


 サンジも、寝転がったままで同じ様に其れを見ていた。


『あ。』




 答えに気付いたのは、図らずも同時だった。



 余り日に焼けていない、少し傷跡が見える細い手と、


 骨張って皮の厚い、たこのある固い手。




「何だ、下らねえ、」





 まるで、誰かと誰かを思わせる様な。



手って好きなんです。
其の人の人生を写したりもするでしょう、
私の手には、ペンだこと、クラリネットのたこの跡があります。
其れと、バイトで作った火傷。
色々あるなあ、と思ったりします。