十五光年先の海

果てしない、とすら言われる空の向こうには、
更に無限の宇宙が広がっている。
まるでちっぽけな自分達には想像も付かない程に広大で、
其れは、いっそ空虚とも言える程。
何千年も、何億年も昔に消え失せた星の光が、
今初めて此処に辿り着く事さえ有るのだと、
知った日の衝撃を今でも覚えている。
「だって其れは、」
壮大である以上に、
「寂しいじゃないか。」
まるで、幻の様で。
「何が、」
一寸ナーバスになっていたのだろうか、
突然後ろからかけられた声に、
チョッパーは文字通り、飛び上がった。
「サササササササササ…………ッ、」
「一体何者だよ、俺は、」
サンジが片眉を上げて、口元だけ歪めた。
しかし、すぐに何を気にするでもなく、
「寒いなー、」
と、煙草の煙を白い息と共に吐き出した。
「まあ、今の時期は冷えてくれた方が返って楽なんだけどな、
でも此の船暖房無いからなー。」
「そうなのか、」
其れは、少し意外だった。
「……無えだろ、」
「そっちじゃなくて……。」
言葉が足りなかった。
本気で暖房の記憶を探り始めたサンジを慌てて止める。
「俺は今迄、年中寒いのが当たり前だったから……。」
サンジは、はた、とチョッパーを見て、
「……あァ、」
成る程ね、と呟いた。
「其れで、」
残り少なくなった煙草を消しながら、サンジが問う。
「主賓がこんな所で、一体何が寂しいんだ、」
「……うん、」
確かに、今宵の宴は半分は自分の為のもの。
其れなのに何も言わずに抜け出してきてしまった。
まあ、行った所で誰も気に留めない様な状態だったけれど。
其れは、咎められるべき事かも知れない。
「前、聞いたんだ。
星は実は光が届くのにとんでもない時間が掛かるほど遠くにあるって。
だから、今俺達に見えてたとしても、もう無くなった星かも知れないんだ。」
「ふうん、」
サンジは吸い殻を海に放った。
「其れで、」
「とんでもねえな、」
チョッパーの言葉に、サンジの声が重なる。
「……え、」
「執念っつーか、意志っつーか。空恐ろしいだろ。」
サンジの言葉に、思わず夜空を見上げる。
「其れ以上に、生きてる奴の方が多いんだ。死んだ奴とまとめて、一体どれだけあるんだろうな。」
チョッパーと同じ様に空を見上げ、擽ったそうに笑う。
「だらだらやってられねえだろ。」
まるで、誰かを思い出している様だった。
ふと、思い出す。
星を、死んだ者に見立てる所があるのだと。
死に携わる者として、知っていた。
ならば、死んだ星は。
「……本当だ。とんでもないかも知れない。」
「な、」
サンジが軽く帽子を叩く。
偉大なヤブ医者の笑みを思い出した。
顔を見合わせて笑う。
キッチンから二人を呼ぶ声が聞こえた。
「行くか、」
「うん、」
秘密を楽しむ子供の様に、目線を合わせ、又、笑った。
「其れで、寂しいってのは何だったんだ、」
「うん。其れはもう良い。」
「ふうん、」
言いながら、サンジがキッチンに入る。
其のドアを受け取りながら、もう一度空を振り返った。
今、自分達が居る此の海に向かって、
数え切れぬ星が瞬いていた。
| 四千ヒットリク「チョッパー」 そして、チョッパー誕生祝い。 サンジじゃねえかとか言われても…………えーと、 御免なさい。 間接的にクリスマスっぽくしてみましたが、如何でしたでしょうか。 皆様、どうぞ良いクリスマスを。 そして、おめでとうチョッパー!! |