07.携帯電話







 今の機種にしてから一度も変えて居ない着信メロディはalways。
 何処のサイトにも置いて居ないからお前作れ、とウソップに言って、五分後に着信に設定した。
 画面に出た彼女の名前に、知らず頬が弛む。


「はーいもしもし、ロビンちゃん、」


 其の声音だけでもう、彼の表情も全部分かってしまう。
 『うわ、何だお前気持ち悪ィ、』
 彼の声の向こうに聞こえたもう一つの声に、苦笑した。


「忙しい時間に御免なさいね、今大丈夫かしら、」


 落ち着いたアルトの声を聞きながら、オーブンと鍋を少し気にする。


「あー、うん。仕込みの最中だから片手間になっちゃうけど、其れで良いなら。御免ね、」


 朝の忙しさは元より良く知って居る。
 呆れる程自分に、若しくは女性一般に甘い彼だが、こう言う時だけは決して優先順位を間違えない。


「じゃあ、手短に話すわね。私の方の発注が向こうの都合で昼間に届くのだけど、其の時間までに行けそうにないの。悪いんだけど受け取って置いてくれるかしら、」


 何だそんな事か、と鍋をかき混ぜる。
 其れ位、連絡無しでもやっておくのに、(でも、声を聞けた事自体は正直嬉しい)こう言う所で筋を通す事に拘る彼女を見る度に、大人だなあ、と成人らしからぬ事を思う。


「了解、何時頃こっちに来れるの、」


 何故か嬉しそうな声音の向こうで、オーブンが鳴った。
 そう言えばあの音は何処で鳴って居るのだろうと、余計な事を考えた。


「美味しそうね、今日は何かしら、」


 ふっ、と笑う様に掛けられた彼女の言葉に、オーブンの窓を開けたままの格好で目をしばたく。


「へっ……シェケルパレと、ナッツの入ったパスタだけど……えっ、」


 多分彼はきょろきょろと辺りを見回して、
 『何してんだよ、』
 何て呆れて言われて居る。
 其の様子を想像して、くす、と頬を弛ませた。


「三時には行けると思うわ、楽しみにしてるわね、」


「……あ、うん。」


「見えなくたって、今日の出来位分かるのよ、」


「……お見逸れシマシタ。」


「ふふ、」


 伝わらないから、伝わるモノ。





 0627  always