14. きせき







「だって、捨てられねえだろ、」
 そう言って、サンジは困った様に笑う。
 手元では古びたアルミのケースがからん、と音を立てる。


 其の中には五つ、止まってしまった腕時計が入って居る。
 捨てられない程気に入って居るのなら、電池を替えれば良いだろう、そう言ったら、


「電池替えるのより買う方が安いってのが気に入らない。」


 返って来たのはそんな台詞だ。


「腕時計だけはな、どうしても物よりデザインなんだよ。
 兎に角、店で気に入ったやつ。
 だから高くて三千円って所かな。
 一万行った事はねえや。
 其れで電池が無くなる迄使うから、どうしても溜まるんだよなあ。」


 邪魔なら、捨てれば良い。
 そんなに狭い部屋ではないけれど、邪魔な物まで置いておく事は無い。


「だって止まったままなんだよ。」


 そうして、一番最近迄動いて居た文字盤を愛おしげに撫でる。


「此だけが、未だあの時のままなんだ。」


「捨てられねえだろ、」



 あの頃の自分自身に妬いたなんて思わないけれど、
 其れで何も言えなくなった事は事実だ。





 番外 金色焦茶の小島