03.鬼







 人の家に来るなり此の態度は如何な物だろう。
 大して丈夫に出来て居る訳でもない畳をばんばんと叩いて、エースが口角に泡を飛ばす。
「って訳だ、別に俺もバケモノやら何やらにわあわあ言う様な質でも無いしな、蝋燭がちいと心許ないがまあ何とか成るだろうっててくてく歩いてった。」
 何時の間にやら話に加わって居たルフィとウソップがうんうんと頷く。
 都合の良い聴衆に恵まれて、エースの語り口は更に早く成る。
「幾ら春に成ったって、其の時分は未だ冷え込むってのに、何でか此っぽっちも寒くねえ。此ァ可笑しいなと、ちろりと辺りを見た。そうしたらな、」
「おう、どうしたんだっ、」
 エースは態とらしく、口元を片手で覆う。
「出たんだよ。」
「出たってアレか、」
「おお、アレだ。ぼうっとな、提灯の向こうに見えたんだ。黄色く、ぼうってな、」
 黄色、
 バケモノらしからぬ色合いが出たな、と此処で初めてゾロの関心が其方に向いた。
「其奴は俺に気付いてかこっちを向いて、笑うんだ。ありゃあ一ッ言喋りかけりゃあアッと言う間にあの世に連れて行かれるな。」
「おおおおお行ってみてえな、あの世か。」
「お前其れは度胸あんのか無知かどっちだ、」
 緊迫感の無い弟をほったらかしに、エースがにやり、と笑う。
「思うにアレは鬼か、色が黄色だから狐だな。俺がぽかん、として居る間にふうっと消えちまった。」
「ほおお、なあ、エース、黄色って言うのも色々有るだろう、狐だったら山吹みてえな感じか、」
「いや、どっちかっつったらアレだ、お月さんの薄い時みてえな……、」


 そう言えば、確か昨日、エースが言って居た辺りでサンジを拾ったな、と、ゾロは冷めた目つきで冷めた茶を啜った。


「おお、何だお前等来て居たのか、」
「ぎいやああッ、出たあッ、」
「サンジッお前狐なのか、鬼なのか、何で黙ってたんだよ冷てえなあ。」
「……おい此は蹴り出して良いのか、ゾロ。」
「…………好きにしろ。」
「おっ、お帰り、御邪魔してます。」
 にこり、と此方に手を振って寄越すエースに、はあ、とサンジは生返事を返した。






 公達に狐化けたり宵の春