サニイ





「なあ、サンジ、今日誕生日だったよな、」
 朝食を終えて、片付けを始めようとした所で、一人キッチンに残っていたトナカイが嬉しそうに言った。
「あー、そうだったか、…そういやそうだったな…。」
 余り自分の事を覚えている性分ではない。
 他の連中の記念日であれば、夕食位は豪勢に、と思ったりもするが、自分を祝っても寒いだけだし。
「前にさ、俺の誕生日にケーキ焼いてくれただろ、だから俺も何かやろうと思って、ずっと考えてたんだ。」
頬を染めて、まるで自分の祝い事の様に話す姿がほほえましい。
「でも、何あげれば喜ぶのか分かんないし、俺医術と変形しか出来ないから、なかなか決まらなくて、」
 取り敢えず、テーブルの上の物を流しに置いて、チョッパーの向かいに椅子に腰掛けた。
「それで、」
 続きを促す。
「うん、其れで、何すればいいのか分かんないから、」
 すると、チョッパーはいそいそと椅子を降り、此方に歩いてくる。
 そして、すぐ左に立ち止まり、帽子を脱いだ。
「今日一日、俺の宝物貸してやる。」
 両手でつばを持って、此方に差し出す。
「…」
 呆気にとられた表情を見て、チョッパーの顔が曇る。
「嫌か…、」
 悲しそうな声に、慌てた。
「いや、そうじゃねえよ、有り難うな、」
 笑みを浮かべて、帽子を受け取ろうと手を伸ばす。
 すると、チョッパーは、椅子に飛び乗り、帽子を頭に被せてきた。
 そして、此方を見て、
「サンジ、ピンク似合わないな。」
 困った様に眉を寄せ、首を傾げる。
「うるせえよ、」
 苦笑して、其の頭を人差し指で突いた。
 チョッパーはころり、と椅子の上で器用に転がり、椅子の向こうに落ちた。
 少しの間があって、ぴょこんと頭を出す。
「なあ、サンジ、ケーキ焼くよなっ。」
 当たり前の様に言ってくれる。要するに、自分が食べたいのだろう。
「分かったよ。」
 苦笑しながら了解するとチョッパーは「チョコが良い」とリクエストを残し、キッチンを出ていった。



 いつもの癖で決まりの文句をデコレーションしようとして、止めた。少々、寒い。
 Happy?

 少し考えて描いた言葉に、また、苦笑が漏れた。
 一体、誰の為の記念日なのか。







 似合わない頭の上の帽子を見た船長が、其れを真似て麦わら帽子を重ねたのは、また別の話。



サンジ誕生日祝いチョッパー編。
実は、私には「誕生日にはケーキ!」と言う感覚が有りません。
甘い物がてんで駄目なので。