灯花





 極彩色の灯が、薄暗い月夜に乱舞する。
 通り過ぎて行く人々の、色とりどりの衣装が夏を更に彩り、訳もなく心を浮き立たせる。
 笑い声の混じる多様な声は、最早其れが一つの音であるかの様にザワザワと響いた。
 数えられる程しか来た事は無いが、夏祭りという雰囲気は好きだ。
「何つーの、何となく儚いんだよな。」
 隣を歩く此の男がそんな情緒を理解する事など無かろう、と思いつつも口に出す。
「何が、」
 此方に目を向けぬまま、そう聞き返してくる。
「夏祭り、今の時期、って言っても良いけどよ、」
「ふーん、」
 周囲を見渡しながら首を傾げる。
 確かに、活気に満ち満ちた此の空間にその様な言葉は相応しくない。
 だが、
「まあ、分からねーでもねえけどな、」
 まさか、同意の返事が返ってくるとは思わなかった。
 こんな、感傷じみた戯言を。
「何だよ、其の面は。」
 少しムッとした様な顔で文句を言ってくるのが何となくくすぐったい。
「いやあ、悪い悪い。あんまり似合わなくて。」
 戯けた様にそう返す。
 だが、何処か感傷を拭いきれずにいる自分に気付く。
「……っか、お前も、そう思うんだよな、」
「うるせえよ。」
 未だに拗ねられている事に、思わず笑みが漏れる。
「……」
 じっと此方を見る目に、一瞬考える様な間が有ったのに気付いた。
 だが、其の正体が分かる前に、するり、と腕を捕まれた。
「はぐれるんじゃねえぞ。」
 一言だけ言って、先の様に此方には目もくれずに歩き出す。
「っておい、一寸待て何だ此の手はッ、」
 引かれる腕を慌てて追いながら怒鳴った。
 気付きたくはなかったが、頬が熱い。
「居なくなったら困るだけだ。」
「お前が言うかッ」
 其れでも、


 嬉しくない訳ではないから質が悪い。



 夏も、もうすぐ終わる。



「ってやっぱりはぐれるしよ……あのクソ方向音痴は……」
 浴衣の美女と、見た事もない屋台に自分がはしゃいだ事も原因の一つであるというのは、



 ……取り敢えず忘れておく。



世道今日さんが発行した『灯籠流し』のパロ。
実はもう一つ書いたのですが、其方は本編読んでいないと意味分からないので。
彼女がオフ本出す度にやっています。