第五景 徒に凋みて
既に梅雨の名残を忘れた町並みは、最も気温の高い時刻を迎えて照りつける様な熱を返した。
駅に続く確実な近道であるものの、車が通行出来ない上に、斜めに道が交差しあい、更に行き止まりまである此の周辺を通る人は少ない。
先生の家は、此から向かう駅を超えて、少し行った所にある。
顔に浮き出た汗が首を伝う。
もう少し歩けば、日陰の道が続く。
今まで何の生き甲斐も無く、惰性だけで生きてきた。
与えられたものを適当にこなして、努力なんて言葉は笑いしか産まなかった。
適当に選び、適当に入った大学でも何も変わらず、時だけが馬鹿馬鹿しく流れていった。
何にも興味を持てないし、持つ気もなかった。
将来の夢なんてものがある筈もない。
只、其の日其の日を適当に生きた。
親も周りも其れを疎ましげにしていたが、人並み以上の親の所得が其れを可能にした。
其れだけだった。
だが、あの夜抱いたのは、紛れもない興味だった。
其れこそ、夜の空気の様な、異質な空気を纏った、サンジ。
先生との関係とか、尋ねたい事は幾らでもあった。
しかし、其れはある意味でどうでも良かった。
何よりも興味を引かれたのは、其の執着心だった。
サンジは、先生に執着している。
其れは間違いない。
だからこそ、死者が骨と化して尚、提灯を掲げ、灯りを点した。
先生が、戻ってこられるように。
其のくせ、いとも簡単にあの家を出るのだと言う。
恐らく本心から、其れが何でもない事だと思っている。
其れも、執着なのだと思う。
サンジは、先生に憑かれている。
知りたいと思った。
ルフィに言われて気付いた。
此の感情は、紛れもない。
そして何故か、心の何処かに、もう一つの感情があった。
其れは、正体を見せぬまま、弱く渦巻いていた。
そう言えば、とショルダーバックから携帯電話を取り出す。
連絡ぐらいはしておいた方が良いだろうと番号を押しかけ、止めた。
いや、止めたというのは語弊がある。
肝心の番号を、知らなかった。
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